僕は10年ほど新卒採用業務に携わってきました。
その経験と体験してきた問題をもとに、
「ターゲティング」のリスク面について書いていきます。
採用戦略の「ターゲティング」は、採用するターゲットを決めること。
戦略とは、捨てることです。
決めると同時に何かを捨てている。
では、企業は採用戦略で一体何を捨てているのか?
その認識はあるのだろうか?
ターゲティング
意図して偏りを生むこと
僕は毎年、採用の期が始まる前に「企画」をしていました。
採用戦略の策定をします。
ここで一番最初にやるのが「ターゲティング」です。
- どんな人が自社で活躍できるか。
- どんな人を自社は求めているか。
- どんな人に自社は求められるか。
「必要な能力」と「欲しい能力」を毎年振り返って考え直し、決めていきます。
そもそも戦略とは、「やらないことを決める」という意味合いが強い。
採用戦略のターゲティングにおいて言えば、
「採用しない人を決める」ことです。
だけど僕がそうだったように、
選ぶ・決めることに集中し、“捨てている”ことに意識が向いていない会社が多い。
自社が何を捨てているか分からない。
ましてや超重要な人について!
ターゲティングの実態は、捨てることより選ぶことに着目されている。
社長の方針“OKな”カタヨリ
ターゲティングをすると、当然社内の人間は“偏る”ことになる。
これはいけないことなのか?
社内の人間が偏るのは悪いことではない!
ただし、意図してそうする場合に限る。
会社というのは、何かしらの思いがあるものです。
- 楽しく働きたい。
- みんなで仲良くやりたい。
- 着実に進んでいきたい。
- エリート集団でありたい。
これは社長の方針。
その思いに社員は乗っかっていくわけなので、
同じ思いの会社を選ぶことが大事なんですね。
だから、偏るのはむしろいいことですよね。
学校はクラスメイトを選べませんが、会社は選ぶことができる。
だから変な派閥を作らずケンカもせず、集団の力を発揮できるんですね。
社長の方針としてのカタヨリはいいこと。
人事の責任
意図せぬ戦略
しかし、ここで人事は注意してほしい。
社長は、何を捨てているか意識していますか?
「明るく元気な人」を採用すると決めたなら
「暗く元気ない人」は採用しませんよ?
本当にいいですか?
ということです。
社内のコンピテンシーは理解しているでしょうか?
どんな人が活躍しているか。
どんな人が活躍できないか。
活躍している人の中に「暗く元気ない人」はいないですか?
活躍していない人の中に「明るく元気な人」はいないですか?
さらに!です。
すでに捨てているものは手元にありません。
ポイント
「暗く元気ない人」がいない会社では、「暗く元気がない人の強み」を知らない。
今後もその強みを活用できない。
捨てたものは見えないんですよね。
これが怖い。
現在の採用市場は、人口減により採用難です。
にも関わらず、会社は人を選ぶ。これが危ない。
今のトレンドは間違いなく逆。より多種多様な人が活躍できる土壌を作ることを優先しないと未来がない。
それを意図しているなら大丈夫。
人事の責任としては、「意図せぬ戦略」になっていないかしっかり確認することが大事ですよ!
【5年後~10年後】偏りのリスクは?
採用ターゲットの影響は、5年後ぐらいから強くなります。
企業の規模にもよりますが、
採用した人材が中核を担うようになってくる時期です。
ターゲティングする時は、「採用しない人材」を意識する。
その人材がいない、5年後~10年後の会社の未来を想像する。
ここでは、時代背景を必ず視野に入れること。
大事な視点
そういった人材が働けない・入社できない自社は、本当に生き残っていくことができるのか?
そういった人材が働ける環境を今から作り始めて、5年後~10年後に備えた方がいいのではないか?
僕がここで問題提起しているということは、当然おすすめは“環境を作って備える”方です。
人がいなくなっているのに、企業が変わらずにいていいはずがありません。
よほどの人気企業か大企業でない限り、
「誰でも活躍できる会社づくり」は今後の重要課題です。
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多様性を受け入れるなら
みんなが“違う”から最大化する
元も子もない話ですが、すべての人が活躍できる組織ならこれ以上強いものはないですよね。
それぞれの違いが強みとなって発揮できれば、すべてにおいて強い。
ライバルなんていなくなります。
しかし、それはほぼ不可能。
業種もあるし、思いもある。
何かを選ぶことは何かを捨てること。
残念ながら、この世のすべての人が満足でいる環境なんて夢のまた夢。
それでいいんです。
社長の方針でカタヨリは意図して作ればいい。
ポイント
ほんの少しだけ、許容範囲を広げる。
今まで働けなかった属性を、ひとつずつ増やしていく。
例えば、「暗い」という属性を許容していなかったとしたら。
「暗い」をポジティブ因数分解
- 人の話にじっくり耳を傾ける。
- 感情をあまり表に出さない。
- 言葉を慎重に選ぶ。
- 注目は好まない。
- 少人数だと居心地がいい。
どうですか?
活躍できる場はいくらでもありそうです。
-
自己表現性【社会人コミュニケーション能力】明るいだけが〇じゃない
続きを見る
ここにも書いたように、「自己表現性」が左寄りだと「暗く」見えるだけ。
問題なのは、そういった属性を理解せずに「暗い」とネガティブに決めつけてしまっていることです。
企業の採用戦略が、「友達選び」のようなワガママになってしまったら、この先は厳しいです。
カタヨルよりワカル
ここまで言ってなんですが、偏ることも大切です。
それがその会社の強みになりますから。
その強みの範囲を広げるイメージです。
色んな人が活躍する土壌を作るには、色んな人を理解することから始めないといけない。
今まで活躍できなかった属性の、“強みの面”に着目する。
その強みが活きる場面を作っていなかった事実を振り返る。
問題になるのは、“理解不足”が原因になっていることがほとんどです。
- 人の特性について正しく理解し、両面をしっかり考える。
- どの面が自社にとっては強みとなり弱みとなるかを定義する。
- 今後受け入れるべき特性は、全社に理解を促す。
- 足りなかった場面・環境を増やす努力をする。
「ワカル」範囲が広がったうえで「カタヨル」方が、会社は何倍も強くなります。
人口減の社会で、生存確率も大きく上がるはずです。
人の特性に関しては、こちらのカテゴリーで紹介しています。
自分の興味・特性を知る
採りに行くより土台作り
今の採用市場は“採りに行く”採用が主流ですよね。
無理もありません。
何もしなければ人がいなくてつぶれてしまいますから。
しかし、そのせいで本来マッチしない会社に入社している人が多いのも事実。
だから会社は同時に土台を広げないといけません。
多様な人材を活かせる土台を作らないと未来が危うい。
今まで理解していなかった属性を理解し、活かせる強みを発見すること。
採用を頑張るだけでは未来はない。
同時に進めていく土台づくりこそ、実は採用における最重要課題です。
今まで意図せず捨てていた強みはどんなものか?
戦略策定においては、一度じっくり考えてみてもいいかもしれませんね。