僕は元人事部長として、社員の様々な悩みを聞いてきました。
しかし「キャリアコンサルタント」になった今、それが“おままごと”だったようにすら感じます。
専門的な技法を身に付けたからこそできる面談・カウンセリングを少しだけ紹介します!
会社内のよくある面談
上司や人事になると、様々な悩みを聞くことがあります。
僕もたくさんの社員やアルバイトさんから話を聞き、その都度アドバイスをしてきました。
しかし、今になって思うのは“いかに自分本位”の面談をしていたかです。
それなりに感謝してもらえるので、学ぶまでは全く気づきません。
①会社の意図する方向へ結論付けたい。
決して会社人としては間違っているとは思いたくないんですけどね。
しかしながらこれをやってしまうと、
本人の本当の問題に気付くことができません。
ある程度会社に反する考えが出てきてしまうと、修正を入れたくなる。
僕も会社人だったのでツライところですが、本来の問題に向き合わせない限り会社に従わせる人材を作ってしまいます。
②持論で解決したくなる。
相談を受ける側は、ある程度成功している人がほとんどです。
そうすると、自分が上手くいった方法を他人にも当てはめたくなる。
人は全員違う。本来は当人が解決方法を導き出すことが望ましい。
確かにそのアドバイスは活きるものなんですが、持論を与えて解決したものとみなすのは時期尚早です。
自分の力で解決できる「生きる力」を与えることが一番のカウンセリング。
③早期解決を望んでしまう。
会社人には時間がありません。
面談の時間も決まっていたり、技法がないと同じところを行ったり来たり。
早く解決したくて、結論に導いてしまう。
時間に追われていると、相談される側もイライラしてきたりします。
心の中で(こうすればいいじゃん!)と思っているんですね。
キャリアコンサルタントのアプローチ
キャリアコンサルタントの基本的姿勢は
クライエント・センタード・アプローチ
です。
相談者を中心とする姿勢のこと。
「なんだ、あたりまえじゃん!やってるよ。」
と思う方は多いはず。僕も学ぶ前ならそう思っていたかもしれません。
以下の3つがその基本です。
- 受容
- 共感
- 自己一致
受容
無条件の肯定的配慮
共感
共感的理解、相談者の世界をあたかも自分自身の世界であるかのように感じること
自己一致
相談者との関係において心理的に安定しており、ありのままの自分を受け入れている
「受容」の時点で難しいことではありますが、そのぐらいは意識しているはずです。
しかし、「自己一致」ともなるとなかなか意識している人はいない。
自分の受け皿が柔軟で広くないと、自分の雑念が相談者の思いの発現を阻害してしまいます。
『ヘルピング』
『ヘルピング』はカウンセリングの段階を示し、それぞれに意図と技法があります。
(相談者を「ヘルピー」といいます)
事前段階
『かかわり技法』
【意図】ラポールの形成のための技法
【技法】かかわりへの準備、親身なかかわり、観察、傾聴
第1段階
『応答技法』
【意図】ヘルピーの自己探索
【技法】事柄への応答、感情への応答、意味への応答
第2段階
『意識化技法』
【意図】ヘルピーの自己理解、目的地を明らかにする
【技法】意味への意識化、問題への意識化、目標への意識化、感情への意識化
第3段階
『手ほどき技法』
【意図】目標へのスケジュールを立て実行する
【技法】目標の明確化、行動計画、スケジュールと強化法、行動化、各段階の検討
援助過程の繰り返し
ヘルピーの反応や行動の結果を吟味しながら繰り返す。
特に応答と意識化が大事。
相談者は意外と問題の本質に気付いていないものです。
しっかりと深堀りしないと問題の本質にたどり着かず、
しっかり意識化しないと主体性を持って取り組もうと思わない。
『マイクロカウンセリング』
ヘルピングに似ていますが、さらに細分化されたモデルです。
①かかわり行動 (視線、身体言語、声、言語的追跡)
②クライエント観察、技法
③開かれた質問、閉ざされた質問
④はげまし、言い換え、要約
⑤感情の反映(非言語に気付く)
⑥意味の反映 (隠れた意味を探す)
⑦焦点の当て方
⑧積極技法
指示
論理的帰結
自己開示
フィードバック
解釈
積極的要約
情報提供、助言、教示、意見、示唆
⑨対決
⑩技法、連鎖、面接、構造化
⑪技法の統合
特に「言語的追跡」「開かれた質問」「積極技法」などが使われます。
積極技法の中では「論理的帰結」や「自己開示」、「フィードバック」「解釈」「積極的要約」を要所で使います。
この技法を使うと
話が同じところを行ったり来たりせず、新たな観点・新たな気付きが生まれるようになります。
答えはカウンセラーの中には存在しない。
相談者の中にあるものを引き出す技法です。
『コーヒーカップ・モデル』
図にすると「コーヒーカップ」のような形になります。
意識に表出している部分で「言語的スキル」によりリレーションをつくる。
無意識化に潜む問題を「非言語的スキル」によりつかむ。
そして問題解決を意識化する。
意識→無意識→意識
このモデルでは、カウンセラーの『無構え』が大事だとされています。
構えのない感情交流で信頼感を生むこと。
『クライエント・センタード・アプローチ』の「自己一致」と似ていますね。
社内で先輩や上司が面談を行う時、そこには「上下」が存在します。
相談を受ける側は、無意識で「教えてあげよう」という姿勢になったり「自分は正しい」という前提を持ってしまったりします。
相談する側も、どうしても「先輩・上司である」という前提。
「相手の中に正解がある」という前提を捨てきれないものです。
この姿勢だと、問題の本質にたどり着くことが難しいということがお分かりいただけたでしょうか?
本人すら気付いていないことが問題の本質。
当人でもない相談者がそれを言い当てるのは、想像の域でしかありません。
答えはその人の中にしかない。
この姿勢を持って面談にあたることで、
自ら気付き自ら行動する「主体性のある人」を育むことになりますよ。