「新入社員に主体性がなくて困る…」と悩んでいる経営者や教育担当の方はいませんか?
もしかしたら、教えすぎかもしれません。
教育とキャリアのプロが見た、新入社員のうちから主体性を発揮させるために必要な社内の体制。
研修を重視しすぎると見落とすものとは?
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『研修』は1週間で十分
(この記事は、新入社員を本部で研修をして現場に送り出すことを想定しています。)
まず、『研修』の考え方自体を改める必要があるかもしれません。
知っておいて欲しいことを全て詰め込む研修はNG!
必要最低限に絞りまくって短期勝負にしましょう。
「詰め込み」は会社の責任回避
1週間と言っても、休日や入社式などを考えると実際に集合研修のようなことをするのはせいぜい3日程度。
それで充分です。
なぜかというと、超単純。
覚えられるわけがないんです。
全て教えようとするのは間違い。
現場に行ってしまったら教えられないことだけ教える。
「教えたからな!あとはちゃんとやれよ!」というのは、会社の責任回避です。
普通の人がそれで出来るわけがない。
新入社員はこう思います。
いきなり現場に「ぶん投げられた」と。
実はこのように、ちゃんと教えようとするほど社員にとっては見放された感が出ることがあります。
なぜか。
現場で教えなくなるからです。
新入社員は「研修全然立たねえじゃん!」(知識とやるのは違う)と思っているのに、現場では「研修受けたんだから後はちゃんとやれ!」なわけですね。
それに、社会に出たのに座学のような詰め込みばかりやってしまうと、情報を与えられることに慣れてしまう。
それが一番、主体性を奪います。
ポイント
大事なのは、
現場で教える環境。
新入社員が自分から聞きにいける環境。
現場の方が「ちゃんと教えてから現場に送ってくれよ」なんて言うかもしれませんね。
これ、ダメです。
そもそも現場が教える意識がないと、新入社員は潰れやすい環境になります。
聞いた時に教えてくれない先輩がいると、主体性は失われるばかり。
「ウチの具体的な業務研修は現場で行います。」
と、新入社員にも現場にも共有しておくことが必要です。
主体性を奪わない・現場との確執を生まない
「新入社員が主体性なくて困る。」という悩みがあるなら、
『主体性を奪わないやり方』を考えてみましょう。
主体性を「持たせる」より、「奪わない」。
ないものを持たせるより、あるものを奪わないほうがはるかに簡単。
主体性を奪うのは、思考を止める行為。
一方的な教えや指示などです。
- 座学研修
- 上司からの適時指示
- 型にはめるマニュアル
などですね。
これらを減らして代替え案を考えるのが、人事の腕の見せどころです。
それから、今の現場に不満があるからと言って新入社員を煽るようなやり方もよくない。
「現場がダメだから、キミたちが変えてくれ!」みたいな持っていき方はNGです。
一時的に新入社員は使命感に燃え、主体性に見えるかもしれません。
しかし、現場でこの使命感を貫ける社員は100人中1人だと思ってください。
その他99人の社員をつぶす行為です。
現場との確執を生んでは新入社員がかわいそう。
現場での確執がなく、すべて型にはめずある程度“余地”がある状態なら、主体性は発揮されやすくなります。
余地とは、思考・タスク順・方法・資源などです。
やり方は現場が教える「OJT」
実際の業務に関するアレコレは、現場が教えるほうがいい。
細かいノウハウは本部よりも、生きた現場にあるからです。
しかし、このノウハウ蓄積がなかったり、教える側が仕事に追われていたりするのが問題です。
これについては、また後に書いていきます。
まずは、
教育を集合研修に頼らずOJTにシフトする。
新入社員に主体性を求めるなら。
大きな方針として、現場の教育への参画が必要です。
では、本部や経営者・人事は何も教育しなくていいのか?
それは違いますね。
長期キャリアプラン+定期面談
『自分の目的』がないと主体性は生まれない
主体性を強化しようとするうえで、個人に必要なもの。
それは、
『キャリアパーパス』
個人の人生の目的。それに沿った会社での目的。
経営者や人事であれば、社員がなぜ自社に籍を置くのか。
この集団への所属理由を共有しておきましょう。
当然の原理ですが、自分の目的に沿わないことを積極的に「したい」と思う人はません。
そしてこの目的こそ、個人だけでは確立しづらいのです。
個人が自社に居る目的を確立する手伝いをする。
【全員】短期集中→【個別】長期キャリアプラン
そのために必要なのは、個別対応。
人はそれぞれ事情が違いますから、所属目的は違って当然です。
そして、キャリアパーパスは1か月そこらで確立できるものでもありません。
しかも変わり続けるものでもある。
一人ひとりに長期的な支援をすることが、経営者や人事のできる社員教育。
考えてみれば、「全員に一気に教える」というのはあまりにも会社都合だと思いませんか?
しかしこれからは、効率を重視してもなんとかなった時代とは違いますね。
主体性を強化したいなら、社員教育に手間・暇・時間をかける覚悟が必要。
ポイント
教育担当者をつくり協力しながら、定期的に個別面談などを行い、
一人ひとりがキャリアパーパスを持てるため、必要な会社の情報を提供しましょう。
そして、どんな将来が描ける可能性があるのか、キャリアプランを立てる手伝いをしてあげましょう。
※具体的なプランニングなどは、また別の記事で書きます。
「振り返り」は一人でできない
振り返りを一人で完結できる人は、経営者レベルの人材です。
ほとんどの人は一人だと、自分を振り返らなくなります。
日記ですら毎日書くのは難しい。
キャリアプランを立てても、自分のことを優先的に振り返らなくなるのが普通です。
だけど、主体性を育むうえでは『自己理解』が必須。
ここを強制的にでもやらせてあげるために、面談などの時間を一か月に一回設ける。
毎週だと物理的に難しい。
2か月ごとだと振り返りするのには長すぎる。
最低限月に一回は、自分自身に『問う』時間をつくるんです。
面談に関しても具体的に書くと長くなるので省きますが、自分自身に問うために上司が投げかけてあげるんですね。
「聞きに行ける」環境づくり
面談では、必ず質問も受け付けるようにしましょう。
ただし時間をかけ過ぎはダメです。
全員に同じ時間にしないと、不公平感が出ますから。
それに、面談の時しか聞きに行けない雰囲気もよくない。
新入社員が“勇気を出して聞いた”時に受け入れる雰囲気が大切。
せっかく勇気を出して聞いたのに、めんどくさそうにされたら・・・
「もう二度と聞きたくない」と思いますね。
これも立派な主体性を奪う行為です。
こういう感じです。
会社や上司の都合のいい時間に教える。
ではなく、
新入社員が疑問に思った時にその場で情報を与えられる環境をつくる。
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社長・人事は「OJT」を支える
学校の教育現場と同じ会社の現場
現場の教育を実現するためには、きっと変えないといけないことがたくさんあるでしょう。
経営者や人事の最も重要な仕事はこの体制づくりです。
これは学校の教育現場でも同じことが言えます。
新しい学習指導要領になり、主体性を育むことが大切だけど、実際はすぐに実現するのは困難な現状です。
どちらもやることは同じ。
子供たちや新入社員に、考えさせる時間を増やすこと。
自ら考える時間を設け、思考を止めないことを目指して体制を変えていくんです。
『現場教育』が可能な環境づくり
仕事の具体的なやり方は、本部より現場の方が詳しい。
だから、以下を現場に与えることです。
- 権限
- 時間
- ツール
教育の担当を任せ、そのための時間を与えましょう。
時間は有限です。
直接売り上げに関わる時間と育成の時間は、ある程度本部から指示をしてあげたほうがいいですね。
また、ツールを作ってあげる。
マニュアルやガイドライン、動画などですね。
やり方は現場の人しか知らない。
だけどやり方を教える効率を上げるためのツールをつくる時間まではない。
現場でしかできないことを現場でやる。
本部でできることはやってあげるということです。
現場の教育を支えられるのは本部だけ。
現場が勝手に部下育成に時間配分をすることはできないし、売り上げにつながらない行動をしていいのかどうか分かりません。
経営者や人事が方針を掲げ、その方針を実行可能な環境を作ってあげることが大切です。
『考える時間』を与える
最終的には、ここです。
主体性を育むには、『考える時間』を与えること。
時間を与えられるのは上司です。
新入社員が本人で時間をつくるわけにはいかないんですよね。
- ミーティングで施策を考える
- 面談で質問する
- 個人キャリアプランの振り返り
- チーム行動目標の振り返り
などを意図的につくる。
意外と見落としてしまうのが、“本人が検証する機会”です。
振り返りですね。
仕事の成果を本部が検証して、何をすればいいかだけ現場に落とし込んだらどうなるか。
社員は言われたことだけやればいい。
“考えない社員”の出来上がりです。
ポイント
思考する時間を与える。
そのための支援を経営者・人事が行う。
良いところ、面白いところを新入社員に譲ってあげてください。
きっと自分から動き出すようになりますよ。
社員個別のキャリアカウンセリングの導入を検討する場合は、ぜひお声がけください。
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