あなたの会社の組織風土はどんなものですか?
これはある意味、国と同じ。
会社の文化を作るには、社員が共通の言語を共通の認識で使うことが大切です。
たとえ理念や行動指針を言語化できたとしても、言葉だけでは絶対に伝わりません。
共有には手間がかかる?
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組織風土づくりの遠回り
人の思考特性は違う
組織風土を狙った通りに作るのは、なかなか難しいものです。
せっかく一生懸命考えて理念を作ったのに、全然社員が分かってくれない。
「これでは絵に描いた餅だ!」なんてことはよくあることです。
その原因は、途中のプロセスを色々飛ばしてしまっていることにあると思っています。
そもそも人の思考特性は違うということを意識しておかないといけない。
人の頭の中は見えない。
思っているより自分と他人は違う思考プロセスを持っている。
「人が泣いている」という事実一つにしても、瞬間感じ取る情報はそれぞれ違います。
「かわいそう…(心が痛い、共感)」
「なんで泣いているんだろう(分析)」
「恥ずかしい奴だな(自己主導的)」
受け取り方は人それぞれなので、その人に合った表現に変換して伝えないと正しくは伝わらない。
発信する側の主観でのみ表現していると、間違って捉えられてしまうことの方が多いはずなんです。
言語の受け取り方はもっと違う
これが『言語』ともなると、より一層伝達は難しくなります。
「え?言語化しないと伝わらないでしょ!?逆じゃない?」と思うかもしれません。
確かにその通りで、言語化しないと伝わりません。
だけど実は言語の情報量は少ない。
言語というのは、いわばアイコンのようなものです。
これは何でしょう?
木で出来ている+細長い+手に収まる+中に亜鉛の芯が入っている+先端を細く削って使う+文字や絵をかくのに重宝する
そう、『えんぴつ』ですね。
『えんぴつ』と言うと、誰もがここまで同じことを連想します。
だから言葉はとても便利です。
だけど、組織風土というのは“どんなえんぴつか”が大事なわけです。
6角形なのか、3角形なのか。
キャラクターの絵が描いてあるのか、メッセージが描いてあるのか。
2Bなのか、4Bなのか。
何㎝なのか、5㎝より短くなっても使うのか。
他の会社とは違う独自性が組織風土です。
『えんぴつ』という一言でこれが伝わることはありません。
事前に見て触って説明を受けるぐらいの情報量が必要なんです。
そして人は思考特性が違うわけだから、そのつもりがなくても勝手に判断しています。
もっと悪いことに、その人の経験(常識)がフィルターとなり、組織独自の『えんぴつ』ではなく個人独自の『えんぴつ』をイメージされてしまう。
言語の情報量は少ないから、人それぞれに受け取られてしまう。
一言で伝えることはできない!
たとえば理念や行動規範などを作るとします。
よく考えるほど、『お客様第一』というありふれた言葉になりがちです。
これは決して間違いではない。
だけど、聞く人によって判断が分かれてしまうのは容易に想像が付くと思います。
コンビニでコーヒーを間違って入れてしまった。
それはお客様のミスですが、ここで判断は分かれます。
「お客様第一なら、かわいそうだからもう一杯サービスしてあげるのが正解だ。」と思う人。
「本当にお客様第一なら、他のお客様に不公平だからサービスしてはいけない。」と思う人。
この正解はお店や会社が決めるしかないもので、それについて基準を話し合っておく必要があります。
理念は『お客様第一』という同じ言葉だと分かっているのに、てんでばらばらの行動をとってしまうんですね。
上司は「なんで分かってくれないんだ!勝手なことをするな!」と言う。
部下は「言ってることとやってることが違うじゃないか!」と言うことになる。
組織風土を決める言語(アイコン)は、その裏にある情報を共有しないとバラバラに動いてしまう。
『営業』とか『人事』とかいう誰でも知っている言葉にも注意です。
「我が社にとっての『営業』とは?」
「我が社にとっての『人事』とは?」
という議論があった方がいいということです。
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【組織風土】会社の文化=共通言語+共通認識
【共通言語】アイコンづくり
組織風土、つまり会社の文化とは、社員同士の“阿吽の呼吸”ともいうべきもの。
「あ!」と言えば「うん!ね。」と一言で伝わるコミュニケーションの速さ・強さです。
そのために企業は、情報を集約して言語化していきます。
「うん!」という行動を引き起こすためのサインづくり。
スマホで言えば、それを押せばアプリが立ち上がるアイコンのようなものです。
業界用語(専門用語)の会社独自バージョンですね。
スポーツでもチーム独自で決めた作戦指示やサインがあると思います。
号令一言で瞬時に理解し行動に移すことができる文化が出来る。
たとえば原始時代に生きていて、数人で狩りに行っているとしましょう。
シカを挟み撃ちし、シカに悟られずに反対側の仲間に指示を出す。
人差し指でGOの合図かもしれないし、投げた小石が落ちたら一斉に飛び掛かる合図かもしれない。
シカが逃げれば、瞬時に次の作戦行動の指示をするために合図を決めておくでしょう。
アイコンは、やり取りの時間を短縮するためのものです。
これは非常に便利で強力ですが、前提認識となる『文化』が必要になります。
文化自体はアイコンの裏にあるものであり、文化の形成にはもっと多くの手間ヒマ時間がかかる。
つまりもっと多くの情報量が必要です。
【展開】我が社において『○○』とは
決めたアイコン、すでに使用しているアイコンがあったら、必ず社員と認識の共通が必要。
これが『共通認識』です。
『会社の文化』=『共通言語』+『共通認識』
言語を“みんなが知っているもの”と思ってはいけません。
「知ってる」と言われても、その認識は違うかもしれない。
共通言語が示すものを、様々なアプローチで共有する必要があるんです。
たとえば、先ほどの『お客様第一』という言葉。
まずは基本として、言語によって展開します。
「我が社にとって『お客様第一とは』何か」を共有する。
我が社にとって『お客様第一』とは、より多くのお客様の共通の喜びを追求することである。
従業員一人が突出したサービスを提供することは他のお客様の不公平に繋がるため、全従業員が均一したサービスをすることを目指すものです。
俗に言うクレーマーは我が社のお客様ではなく、むしろお客様に害を与える存在です。
そしてクレームとは・・・
と展開していきます。
これに正解はなく、経営幹部や社長が頭をひねって考え出すものです。
共有なしに仕事をはじめてしまったら、トラブルになることは誰でも分かりますよね。
それから、言語だけでなく動画や図解で解説することも効果的です。
思考特性の違いはこのようなところに現れます。
言語で把握するのが得意な人、感情を感じ取るのが得意な人、図解で認識するのが得意な人と様々だからです。
理念などの抽象的なものは、ショートムービーにしてまとめておくと伝わりやすいものになります。
ストーリーや歴史を交えて、繋がりで解説するのです。
シチュエーションで伝える
最後におススメの共通認識の作り方についてです。
それは、『シチュエーションで伝える』ものです。
別の言い方で言えば、『ケーススタディ』になるかもしれません。
ただ、ケーススタディは「こんな時はこうする」という仮定の話。
本当におススメなのは、『起きた事実を共有する』ことです。
職場で起きたことを共有し、会社としての評価や考え方まで共有する。
有名なリッツカールトンというホテルがあります。
そこには『クレド』と言われる行動指針がありますが、社員の行動を事細かく規定するルールがあるわけではありません。
それでも社員は“紳士淑女”というクレドに則り、同じように感動のサービスを提供していく。
これは決して“クレドが優れているから”ではありません。
各現場で起こったことを朝礼で伝えていたんです。
アイコンとなる『紳士淑女』という言葉の文化を伝えるため、途方もない時間と回数をかけて共有を行っていた。
だからこそ、たった一つのアイコンなのにも関わらず、社員は自信を持って自分で考えて行動することができるんですね。
『共通言語』に対して『共通認識』を持つため、職場で起きたことを共有して「これは素晴らしい!」と付け加える。
逆にダメなことを共有するのもいいですが、その場合は当事者を貶めないように注意しましょう。
毎日とは言わずとも、同じように少しずつ文化は出来上がっていきます。
「今日は理念の『お客様第一』についての事例共有です。」
「○○店でこんなことがあり、こんな対応をしたところ、こんなふうに喜ばれたそうです。」
「これは我が社が考えるお客様第一に則った、素晴らしい行動です。」
こんなふうに事実と評価が積み重なっていけば、社員たちの心は一つになっていくはずです。
会社の文化づくりには、手間ヒマ時間を惜しまずに取り組んでいきましょう。