「マニュアルなんていらない!」という人は多いが、本当にそうだろうか?
何を隠そう、僕もいらないと思っていた。
無駄なマニュアルはただの自己満足だけど、今は全てを“ゼロに戻す”のがいいこととは思えない。
自分だけよしでなく、会社の成長を願うなら?
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「マニュアルなんていらない!」の落とし穴
『気持ち・志』が大切
「マニュアルなんていらない!」と思う気持ちは本当に良く分かります。
僕も接客業をしていた時に、お客様に対する“気持ち”なんて文字におこすことは出来ないと思っていた。
「気持ちや志が一番大事なんだ!」と思うので、マニュアル人間になってほしくない。
機械的にやっているだけでお客様が喜ばないのは真実ですよね。
だからそんな職場では、教え方も精神論になりがちです。
すると、会う人合わない人が出てきて、会わない人は辞めるしかなくなる。
「気持ちが一番大事なんだよ」と言っても、それで伝わる人と伝わらない人がいることを無視していました。
「ついてこれない奴はおいていくぞ」ということに他ならなかったわけですね。
確かに気持ちの部分はマニュアルで表しにくいものですが、そこにチャレンジした会社が伸びています。
どうしたらお客様への気持ちが醸成されるのか、どうしたら気持ちが伝わる接客に見えるのか。
ただ感情だけで伝えるのではなく、より多くの人に伝わる形に変換する。
人に伝える時には、いつでも“形”が必要になる。
感覚が"後世に”伝わるならマニュアルは要らない
会社というものは、個人が辞めても存在し続けます。
ものすごく仕事が出来る人がいたとして、その人が辞めたら売り上げががた落ちするなら、会社の実力ではありません。
会社の実力は、“誰でも出来る状態”がどれだけ整備されているかです。
何の形もない、ただの感覚でこれが実現できるでしょうか?
次の代に引き継いでいく時に、先人の役割は“同じ失敗を繰り返させない”ことや“成功しやすい方法を伝える”ことです。
キャリアの発達段階では、これを『世代性』と呼びます。
もっと大きな社会で考えた方が分かりやすいかもしれませんね。
例えば現在はどんな会社でもパソコンが必需品。
このパソコンの発明を、イチからすべてやっていたらどうでしょう?
きっとほとんどの会社が紙と鉛筆で仕事をするでしょう。
Excelがなかったら?スマホがなかったら?LINEがなかったら?ブログがなかったら?YouTubeがなかったら?
人間はいつの時代も、誰かが積んでくれたノウハウを使って現在をより良く生きているんです。
会社においては、いかにそのスタートラインを引き上げてあげるかがとっても大切なんです。
“出来てしまう人”は教えられない
ちょっと注意なことがあります。
自分が“考えずに出来てしまう人”は教えるのが苦手です。
感覚で何でも出来てしまう人というのは、出来ない人が何を考えているのかが分かりません。
ただ「なんでそんなことも出来ないの!?」「それが出来ないんじゃ無理じゃん」とすぐに諦める。
でも、出来るまでに苦労した人というのは“出来るまでの道”を知っている。
だからマニュアルを作るなら苦労して出来るようになった人か、まだ出来ていない人がいいでしょう。
感覚でやっている人が表す言葉は、何を言っているのか分からないことが多々あります。
これは、感覚で出来ている人の頭が良いという訳でもありません。
ただプロセスを意識していないので、無自覚なんですね。
逆にプロセスを細かく意識する人は、すぐにできないかもしれないけど世代性が強くなる。
どちらが優秀なんて言うことは出来ないんです。
『感覚』でやっているように感じていても、そこには隠された『プロセス』が存在する。
感覚で表現する人はそれを自覚し、思っている以上に事実を掘り下げて言語化しないといけないことを理解しましょう。
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会社の進歩、集団の進歩
“ゼロに戻す”とどうなるか
たとえば、歴史を解明するうえでは必ず“証拠”が必要になります。
歴史が闇に葬られたり謎のまま終わってしまう原因は、“記録が残っていないから”です。
つまり、なかったことになる。
過去にあれだけ各地で栄えた文明が滅びたのはなぜでしょう?
他の地で同じ文明が起こらなかったのはなぜ?
その文明はなぜ、全容が明らかになっていないのか?
なぜいちいち掘り起こしたり研究したリしないといけないのか?
記録が残らず“ゼロに戻ってしまった”からです。
せっかくその地で蓄えた人類の英知も、失われて誰も引き継ぐものがいない。
『進歩がなくなってしまう』ということです。
人間がたった一人で体験していける時間は限られている。
だから長い時間をかけて、個人が死んでも後世に残していくことで人類は進歩してきたんですね。
「自分だけよし」は会社を衰えさせる
個人で終らせることは進歩を止める。
この考えがとても大切です。
めちゃくちゃ仕事が出来る社員がいたとして、その人は良いでしょう。
自分が一番ともてはやされるし、高い給料ももらえる。
だけどその人に頼り過ぎた会社は、その人を失った瞬間に売り上げが“なかったこと”になる。
これは会社の実力ではなく個人の実力。
悪気はないとしても、ニセモノの会社の実力をつくっていることになります。
だから、出来る人からはノウハウを提供してもらうことが会社の責任です。
世代性に評価・報酬を与え、「自分だけ良し」を排除する。
これが出来なければ、将来の会社の衰退は確定しているということです。
【毎年一歩】ノウハウの蓄積を意識する
会社が意識した方がいいのは、『ノウハウの蓄積』です。
これが本当の会社の実力だからです。
毎年一回でも、振り返りの場を作って“事実の洗い出し”をするといいでしょう。
何をしたのか、それは良かったのか、悪かったのか。
この情報の共有が会社を進歩させていきます。
人類の進化の過程と同じです。
さらに形に残す。
つまり、マニュアルがあると進歩は確実になります。
ただし、マニュアルは“簡単に変更できる”ようにしておくこと。
どんなものでもアップデートできないと、いずれ使えなくなりますから。
「決まってしまう」と思うから、マニュアルは毛嫌いされる。
そうではなく、マニュアルは改善表です。
過去の事実をひっさげて、現在起きていることを組み合わせてどんどん進化させていきましょう。
大切なのは、ゼロに戻らないこと。過去にした失敗を何度もしないこと。
【毎年一歩】確実に前に進んでいくことです。