僕は元人事部長、現キャリアコンサルタントとして社会での大きな問題だと感じていることがあります。
『キャリア教育不足』
社会ではそのせいで様々な問題が現実に起こっている。
そして政府もこの問題を根本から解決するため、「キャリア教育」を強化。
2020年からの新しい学習指導要領では「生きる力」を育むために、学び方すら変わる。
社会が変わる。
学校が変わる。
変わらないのは、大人たちだ。
教育されたことのない大人が、子供たちに必要な『キャリア』をどう教えるか?
大人の私たちが取り残されないためにも、「キャリア教育」は今一番必要な勉強。
文部科学省が推進する「キャリア教育」
「キャリア教育」とは何か
自分らしい生き方を実現するための力を育むこと。
キャリア教育の定義
「一人一人の社会的・職業的自立に向け、必要な基盤となる能力や態度を育てることを通して、キャリア発達を促す教育」
キャリア発達とは
「社会の中で自分の役割を果たしながら、自分らしい生き方を実現していく過程」
人は、職業人、家庭人、地域社会の一員等、様々な役割を持つことになる。
それらの「働き」を通して人や社会にかかわる。
そのかかわり方の違いが「自分らしい生き方」である。
子どもたちが社会の役割を果たす中で、個性を発揮しながら自立して生きていくために必要な力を育てる教育。
メモ
新しい学習指導要領の大きなコンセプトは、「生きる力」となっている。
注意ポイント
社会では、お金を稼ぐことが「働くこと」と考えられる。
これだけで、いかに社会の認識と日本が将来目指すべき方向に大きなギャップになり得ることが分かる。
キャリアはお金を稼ぐことだけではない。
「キャリア」はまだ日本で共通言語・共通認識になっていない。
この教育を実現するために、大人たちには知らないことが多すぎるんですね。
例えば「自分らしく生きるにはどうしたらいいの?」と聞かれたら、
「生きる力ってなに?」と聞かれたら、どう答えますか?
推進される背景と課題
では、なぜ大きな改革をしてまで「キャリア教育」が推進されるのでしょうか?
社会で問題にさらされてきた大人たちは、感覚的に理解しているかもしれません。
背景
情報化・グローバル化・少子高齢化・消費社会等
学校から社会への移行をめぐる課題
①社会環境の変化
・新規学卒者に対する求人状況の変化
・求職希望者と求人希望との不適合の拡大
・雇用システムの変化
②若者自身の資質等をめぐる課題
・勤労観,職業観の未熟さと確立の遅れ
・社会人,職業人としての基礎的資質
・能力の発達の遅れ
・社会の一員としての経験不足と社会人としての意識の未発達傾向
子どもたちの生活・意識の変容
①子どもたちの成長・発達上の課題
・身体的な早熟傾向に比して,精神的
・社会的自立が遅れる傾向
・生活体験・社会体験等の機会の喪失
②高学歴社会における進路の未決定傾向
・職業について考えることや,職業の選択,決定を先送りにする傾向の高まり
・自立的な進路選択や将来計画が希薄なまま,進学,就職する者の増加
それもそのはずですよね。
「自分で考えられる」ような教育は受けていないんです。
正解は全て決まっているし、十分な情報も考え方も提示されていない。
僕はキャリアを勉強して始めて理解しました。
公式も教えてくれないのに答えを出せと言われているようなものだと。
だから、教育には以下のようなことが求められるようになりました。
学校教育に求められている姿
「生きる力」の育成
~確かな学力,豊かな人間性,健康・体力~
【社会人として自立した人を育てる観点から】
・学校の学習と社会とを関連付けた教育
・生涯にわたって学び続ける意欲の向上
・社会人としての基礎的資質・能力の育成
・自然体験,社会体験等の充実
・発達に応じた指導の継続性
・家庭・地域と連携した教育
基礎的・汎用的能力
ちなみに、キャリア教育で育成すべき力は『基礎的・汎用的能力』と言われています。
人間関係形成・社会形成能力
- 他者の個性を理解する力
- 他者に働きかける力
- コミュニケーションスキル
- チームワーク
- リーダーシップ など
自己理解・自己管理能力
- 自己の役割の理解
- 前向きに考える力
- 自己の動機付け
- 忍耐力
- ストレスマネジメント など
課題対応能力
- 情報の理解・選択・処理等
- 本質の理解
- 原因の追究
- 課題発見、計画立案、実行力、評価、改善 など
キャリアプランニング能力
- 学ぶこと・働くことの意義や役割の理解
- 多様性の理解
- 将来設計、選択、行動と改善 など
社会で生き抜いていくには、こういった力が必要ですよ~と言っているんですね。
ここで意識しておきたいのは、この問題は僕たちが起こしているということ。
だから根本的に教育が見直されることになった。
僕たちに不足している力でもあるんです。
「自己理解ってどうすればいいの?」「個性ってどんな種類があるの?」と聞かれて、どう答えられますか?
どのように進められるか
学校ではこのようにキャリア教育が進められます。
方向性
幼児期の教育から高等教育まで、発達の段階に応じ体系的に実施。
様々な教育活動を通じ、基礎的・汎用的能力を中心に育成。
①小学校
働くことの大切さの理解、興味・関心の幅の拡大等、社会性、自主性・自律性、関心・意欲等を養う。
②中学校
社会における自らの役割や将来の生き方、働き方等を考えさせ、目標を立てて計画的に取り組む態度を育成し、進路の選択・決定に導く。
③後期中等教育
生涯にわたる多様なキャリア形成に共通して必要な能力や態度を育成し、これを通じて勤労観・職業観等の価値観を自ら形成・確立する。
④高等教育
学校から社会・職業への移行を見据えて、自らの視野を広げ、進路を具体化し、それまでに育成した社会的・職業的自立に必要な能力や態度を伸張・深化させる取組を教育課程の内外での学習や活動を通じ充実。
となっています。
また、2020年からすべての小・中・高で「キャリア・パスポート」が実施されます。
キャリア・パスポート
児童生徒が自らの学習状況やキャリア形成を見通したり振り返ったりして、自己評価を行う。
主体的に学びに向かう力を育み、自己実現につなぐもの。
教師にとっては、その記述をもとに対話的にかかわることによって児童生徒の成長を促し、系統的な指導に資するもの。
率直に、教えるイメージすらわかないのが私たち大人の現実ではないでしょうか?
キャリア・パスポートも形骸化してしまいそうな予感がします。
キャリア・パスポートはキャリアコンサルティングの側面で言うと、「ジョブカード」に近いもの。
必須ともいえる重要な振り返り・意思決定ツールです。
『問題』は子供にも大人社会にも
いかがでしょうか?
変わっていく実感はどのぐらいありますか?
待ったなしで「キャリア」という言葉は学校内で、子供たちの間で独り歩きします。
大人がキャリア教育を知らず、子供に教えようとしている。
この問題は、子供たちだけでなく私たち大人の社会にも確実に降りかかってきています。
キャリアを知らない大人が起こしている様々な問題、その要因に気付いていないことも現実です。
そして教育の現場はその社会の問題を知らない。
「アクティブ・ラーニング」が重要なのはなぜか?
その本質を体験している人が教えるわけではない。
例えば、具体的に行われるキャリア教育には、職業体験やインターンシップなどがあります。
教育の現場では、どんなギャップが生まれそうですか?
- 従来の教育活動のままでよいと誤解する。
- 「職場体験活動」の実施をもってキャリア教育を行ったものとみなす。
- 教員一人ひとりの受け止め方、実践の内容・水準にばらつきがある。
このままでは根本の解決を見るまで何十年と年月がかかる。
しかし現実社会では問題が起き続けて、悪化の一途をたどる。
注意ポイント
「キャリア教育」または「キャリア」そのものの捉え方が統一されていないことが大きな要因。
大人が「キャリア」について学ぶことが何より大事。
長くなるので、続きは次回に書いていきます。
次回、続きの内容
学校内で予測できるギャップ
- すぐに変わることはできない現実
- 先生には社会の問題を体感できない
- 「キャリア」が共通言語になっていない
親が知るべきことは何か?
- 「キャリア」の認識
- キャリアには理論がある
- 子供に就いてほしい職業ランキングから見える親の思い
- キャリアパーパス・キャリアプロセス・キャリアストップ
- キャリア形成を細分化して運用する
-
親は子供にどう教える?②【キャリア教育】大人が知るべき“人”の道
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