先行きの見えない社会で「キャリアプランを明確にしたい」と思うかもしれない。
でもそれは、ただ安心したいだけで本質的な問題から目を背けているかもしれない。
元人事部長キャリアコンサルタントの僕がキャリア形成で提案するのは『衝動』と『願い』です。
キャリアに計画はいらない!?
一本道のキャリアプランは危険
僕はキャリアコンサルタントですが、キャリアプランを明確にすることはおススメしていません。
明確にするということは絞ることでもあり、その先にたくさん落ちている可能性を見て見ぬふりして走り抜けてしまうということになるからです。
だから僕は長期のキャリアの考え方を先に伝え、一本の道ではなく扇状に広がるフィールドをイメージしてもらいます。
少なくともこれだけは知っておいてほしいんです。
一本道のキャリアプランは危険なんだ。
本来縦横無尽に広がっている可能性を全て拾うことは不可能です。
だけど時代は進み、昔よりも多くの可能性を拾うことは出来るようになっています。
プロのスポーツ選手がいい例でしょう。
昔なら現役を引退したら収入がなくなっていたかもしれない。
でも今は、極めたスポーツという強みを使って様々な職業に転職可能です。
プロスポーツ選手ほど極めることができるなら一本道に近くてもいい。
でも短期で残す功績が高い場合に限られるし、その後どうにかなる可能性も高い。
芽が出なかったほとんどのスポーツ選手は、他の可能性を捨ててきた代償を背負うことになります。
中心を捉えながらも、常に柔軟に移り変わっていけるキャリアである事が重要なんです。
「決まることが安心」から抜け出す
これだけ変化の激しい世の中、10年後さえ予測することは困難です。
どの職業が生き残り、どの仕事がAIに駆逐されるか分からない。
未来を読むことができないのに「キャリアプランを明確にしたい」と思うのはなぜでしょうか?
人間はほぼ全員、そういう習性を持っていると思います。
安心したいのではないでしょうか。
でも文字通り、ただ安心したいだけで本質的な問題から目を背けているかもしれないんですね。
本質的な問題とは、激動の人生100年時代に柔軟かつしたたかに対応し続ける自分づくりです。
もしかしたら、道を決めることでそれ以上の自分の未知の変化を避けているのではないか。
「道が決まることが安心」からは抜け出す必要がある。
未知を未知のまま、道にしない覚悟を持つ強さを持つことがキャリア教育だと思うんです。
例えば自分が商品なら
これからは個人の時代と言われ、個人の市場価値が問われる時代です。
もし自分が一つの商品だったらと考えてみましょう。
あらゆる身の回りの商品が、時代と共に姿形を、時には目的すらを変えていきます。
テレビという商品には白黒から色が付き、ブラウン管から液晶へと仕組みが変わり、決まった時間の放送からYouTubeなどの個別時間へと変貌しています。
電話は家庭に一つから一人に一つに変わり、目的は通話という手段を更新し続けています。
アプリは常にバージョンアップを繰り返し、それを止めたとたんに違うアプリに先を越されます。
変わり続けないと存続できなかったが、最初から現在形を目指していた商品は数少ない。
生き残ったのは、市場のニーズに合わせて変化してきたからです。
例えば自分が商品なら、変わり続けなくてもいいだろうか?
そう考えると、ある意味キャリアプランは自己満足とも言えます。
それも求めてくれる人がいない限りは、存続することは難しいのです。
まず小さな目標に対して進み、進んだ先で柔軟に変化していくことがキャリア形成と言えます。
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2つのコンセプト『衝動』と『願い』
では、何も考えずにキャリアを歩んでいくのか?
それは違います。
主にこの2つのコンセプトを持つことで、誰のものでもない自分のキャリアを形成することが出来ます。
それは「自分軸」と「社会軸」です。
2つのコンセプト
自分軸の『衝動』~どう在りたいか~
社会軸の『願い』~なんとかしたいのは何か~
『衝動』自分はどう在りたいか
「やりたいことは何だろう?」という問いに、自分の好きな事や興味のある事を考える人は多いでしょう。
でも、それだけだと仕事にはなりません。
誰かに求められるぐらいには専門性やスキルが必要だからです。
そして実はこの「やりたいこと」は自分の衝動と願いの集合でもあります。
まず『衝動』とは、自分がどう在りたいかです。
例えば、仕事をしていて「もうこんなところには居られない」という衝動にかられたことがあるかもしれません。
逆に、「あの人と一緒に働きたい」と強烈に感じて勇気ある一歩を踏み出せた人もいるでしょう。
そのように、衝動的で反射的な行動の奥には自分の真の思いが隠されています。
この衝動が「自分はどう在る時に幸せなのか」を知るセンサーです。
どんな仕事をするか、どんな職業に就くか、それとは関係なく幸せに働いていくために大切なこと。
『働き方』を決めるものです。
「自分がどう在りたいか」という衝動的で反射的な思いに気付くことで、『働き方』が見えてくる。
同じ「やりたいこと」でも、働き方を間違えるとあっという間に嫌いになります。
せっかく夢に見た教師になっても、どうしても周囲の先生との関係性を保てなかったり。
おそらくそういう人は、教師が合っていないのではなく古い体質で固まった大勢の中にいることが苦手なんだと思います。
YouTubeで授業をやったり、フリースクールで先生になったりすると、夢に描いていた自分の在り方に近づけるかもしれません。
誰かの誘いに惑わされずに自分のキャリアを形成していくためには、どう在りたいかを持っていることが非常に重要です。
『願い』なんとかしたい何か
もう一つは『願い』です。
これは、自分は社会に対して何が問題だと思っていて、どうなればいいと思っていて、そこに働きかけたいと思う意志です。
つまり、なんとかしたい何かと言えるでしょう。
「そんなのすぐに持てるわけないじゃん」と思いますよね。
その通りで、社会に出てすぐに確信できるようなものではないんです。
「やりたいこと」はすぐに決められると思っていること自体がすでに勘違いなんです。
仕事を経験し、深く考え、悩み苦しみ、現実を見た後に、「これは何とかしないと!」と思うことが出てくるでしょう。
ここで『何をするか』が決まります。
「なんとかしたい」と思う願いが芽生えることで、『何をするか』が分かってくる。
何不自由なく働いていて、収入さえ安定していればいいと思う時期が来るかもしれません。
でも、40歳あたりから来る『人生半ばの過渡期』は甘くない。
「これでいいのか?」と本来の自分と向き合わされます。
しかもこれから先の個人の時代には、主体性が求められます。
会社がもっていた使命感を、個人が持つ時代になってくるんです。
この想いが強いか弱いかで、知識の深さ・スキルの高さ・人脈の広さ、様々なところに影響してきます。
これは現代の日本人に圧倒的に足りない部分だと感じています。
ポイント
『衝動』と『願い』
『どう在りたいか』と『なんとかしたい何か』
これを掛け合わせてみましょう。
2つのコンセプトが集合した自分が歩むキャリアは、周囲に散らばる可能性をことごとく拾い集めながら大きく成長していきます。
(塊魂みたいな感じ)
まずは衝動から確かめながら、願いの芽を探るように一つ一つを深く考えながら仕事していきましょう。
計画の通りに進み、仕事に対する深い思考や自分のセンサー反応を無視してしまっては、結局キャリアは先細りになります。
道ではなく、未知のフィールドを行く。
安心は計画ではなく、内面の自信に芽生えてきます。