キャリア教育には、アートの考え方を取り入れるべきではないか。
「よくわからない」と思われるアートは全て理由があり、壁を壊した先に独自の世界が広がっている。
個性の時代、独自性が大切だと言われる人生100年時代、他の誰でもない自分をどう表現する?
アートが『よくわかんない』ままでいいの?
アーティストと出会って
という偉そうなタイトルを付けた割に、僕はアートについて詳しいわけではないということは言っておきましょう!
ただ「アートの考え方は僕たちにも無関係ではないのではないか?」
アーティストの方と出会って対話し、そう感じたので記事にしておきます。
僕もそうでしたが、「アートってよくわかんない」と思いますよね。今までそんなに深く作品の作り方とか、どういう思いで描いたかとか、なぜそうなったのかなんて聞いたことがないですから。
学校の美術の勉強でそんなことは習わないので、みんながよく分からないままなんです。
でも実は、作品ひとつひとつに深い深い考察があることが分かりました。
恥ずかしながら「ああ、僕はほんとに物事の表面しか見ていなかったんだな」と思い知らされるぐらい、その方が感じている世界は奥深いものでした。
同時に、『これはキャリア教育に取り入れた方がいいじゃないか』と強く感じています。
作品は「圧縮された箱」
例えば、訳の分からない作品の代表としてピカソの絵があると思います。(めちゃくちゃ失礼ですが)
でもピカソは実はとんでもなくデッサンが上手い。ピカソに限らず、すべての絵描きの方がそうだと思っていいでしょう。
基本は完璧にできている上に、わざと崩しているというか、独自の表現の仕方をしているんですね。
ピカソの絵で、顔のパーツが変な方向についているものがあります。それは、「人って色んな方面から見た方がよりリアルなんじゃないの?」というリアルさの追求だということです。
ただ写真のように目に映る情報だけじゃなくて、内面や別の瞬間を全て一枚の絵に凝縮した。
僕が出会った方もそうでした。
道で出会った草や花を、それこそ五感すべてで感じようとする。手に取り、よく見て、味わい、音を聞いて、角度を変え、成り立ちを考え、環境を見る。
出来上がった作品の花の色は、自然には存在しない色でした。
作品の独自性の裏には、とんでもない量のインプット・情報が隠れていたんです。
作品は圧縮された箱であり、中身が本質。なのに僕は、その箱を展開せずに外だけ見て判断しようとしていた。
機会があったら、作品をつくった人に話を聞きながら鑑賞してみてください。きっと見えていなかった世界が展開されると思います。
アーティストの方たちは、あまり言葉を使いません。ビジネスマンのように言語化するだけに捉われていないので、僕たちが聞いてもなかなか言語で分かるようには返してくれないでしょう。
でも、それは僕たちに前提知識がないからとも言えます。僕たちが言語にとらわれ過ぎているとも言えます。
もっと自由で、もっと個性的なものが今後の人生100年時代に求められる気がしてなりません。
『超・独自性』は外見を壊した中から解放される
人生100年時代は個性の時代と言われ、個人の独自性が大切だと言われます。じゃあどうやって独自性を持てばいいのかと、みんなが悩んでいると思います。
僕は特性分析を用いて個人の根っこの部分に立ち返り個性を発揮する支援をしていますが、アートはこれにもっと深く潜りこむものではないか。
作品を見ると、どれも個性的ですよね?
大きなキャンパス、小さなキャンパス、立体、電子的、空間、建物。
筆で描く人、ヘラで描く人、手で描く人、躍りながら描く人、描いてから削る人。
抽象、印象、実体、リアリティ、感情、歴史。
色んなものを色んなもので表現しようとします。
なぜか?
僕が感じたのは、意図して真似しないように奇抜にしようとしているわけではない。誰かの真似になっていないのは、他の誰でもなく自分と向き合っているからだと思います。
人は自分のことが一番見えないと言いますが、アーティストの方はそれでは作品を生み出せない。自分の外見すら壊し、深く自分の中に入り込んで感じていることを確かめてくる。
自分の真ん中から発したものだから、結果的に独自性が生まれる。
自分と向き合う力、キャリアコンサル的にいえば『自己理解』です。
本質は目に見えない。一度深く潜って感じたものを、もう一度外の世界に表現しないといけない。
その時に再構築し、何かと何かの組み合わせによって全く新しいものが生まれていく。
多くの人に理解される必要はない。それよりも自分を自分のまま表現できることが、今後のキャリアでは重要になってくるのではないでしょうか。
個性の時代と『アート』
自己表現の最高峰~キャリア教育
ということで、なぜアートがキャリア教育になるのか。
それは、アートが『自己表現の最高峰』だからです。
キャリアコンサルをするとき、結果としてクライアントが求めているのは自己表現です。だけど、本当に自己表現がしたいなら、まず自分を理解しないといけない。
あたり前ですが、ほぼすべての人が自己理解できていないから、私たちキャリアコンサルタントや心理カウンセラー、自己分析ツールやテストが存在しています。
現代社会の問題の根っこにはこれがあります。
ほぼすべての日本人は、自己理解が苦手。
ここに気付いてすらいないのが現状と言えますが、何より「アートってよくわかんない」と思ってしまう私たちの前提知識の浅さが証拠ではないでしょうか。
本当に自分と向き合えば、こんなにも独自の感じ方をしている。人それぞれで生きている世界が全く違う。
それを知らずに当たり前のように生活できていたのが、今までの時代だったのです。
自分の世界と向き合い表現する力
アートを学ぶと、表現の多様さを思い知ることになります。
そして様々な表現をする人を知るたび、僕たちは自由になります。
「こんな表現もあるのか!」
「この人はそう感じるのか!」
「あ、自分にもそういうとこあるぞ!」
「とんでもない考え方するなあ!」
そう感じると、『それでいいんだ!』と思うようになりませんか?
個性はさらなる個性を解放させてくれる。
僕はそれが、アートに秘められた力だと思っています。
プロセスはこうでしょうか。
- 多くの事象を感じとる。
- 自分はどう感じているのか、内面と向き合う。
- 自分の世界を知る。
- その世界をどう表現するか考える。
- 超・独自性が生まれる。
つまり、
アートによって、自分の世界と向き合い表現する力が養われる。
職務経歴書に何を書いていいか分からないと言う人の原因は、まずほとんどの場合情報不足。
自分と向き合い切れていないのが原因です。
それから、訳の分からない言葉のままではなく、書類では言語化、面接ではエピソードなどで語る表現をする。
どちらも学校では教ってこなかったことですが、社会では必要に迫られていることです。
「それでいいんだ」~『見方』を知ることで変わる世界
それから、とても大切なことを最後に描いておきます。
それは、個性の活かされる世界では個性を尊重する人たちの存在が必要だということ。
例えば、それまで“いかに実写に近い絵を描くか”が勝負だった時代に初めてピカソのような絵を見たら、当然バカにしたでしょう。
理解されない環境では、絵画に値は付きません。
でもこれからは、それどころじゃない個性群の人々の活躍が必要になる時代。
違いを認めないヒマなんてない。
前提として個性が大切であること、その個性を尊重すること、だからこそ自分も自信を持って表現すること。
他者を理解し、自分を理解する。
『それでいいんだ』と言える世界
そんな環境になることが大切だと思います。
アートに対して理解を深めることで、きっと物事の見方が変わります。
外見だけではなく内面や本質を見ようとする力。
まずは家庭で、キャリア教育として初めてみてはいかがでしょうか。