『考えるちから』が必要とされる社会になっていくのはなぜなのか?
キャリアコンサルタントが考えるキャリア教育のあり方。
会社に頼れない社会、外に出ることは“正解を失う”ことを意味する。
正解のない社会を生き抜いていく力、深く考え答えを出す力とは。
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【子どもの考えるちから】が必要とされている
思考の深さを問う中学受験
中学受験の問題を見ると、あることに気付きます。
「これは普通に授業を受けているだけじゃ解けないぞ!」
学校のテストで100点を取れる子でも、もしかしたら苦手な子は苦手かもしれない。
いったい何が違うのか?
中学受験では、深く思考しないと解けない問題が多い。
広く論理的に問題を捉えた後に(時間も限られているので)、「おや?」と思ったところに深く突っ込んで考えないと答えが見つからないようになっています。
大人でもなかなか難しい問題だけど、解ける子は解けているんですよね。
でもこれは“一夜漬け”のように、ちょっとやそっと対策しただけでは絶対に解けません。
『センス』とも言われてしまいそうな力ですが、実は筋トレと一緒で訓練が必要なものなんです。
『生きる力』の「思考力・判断力・表現力」
2020年の新学習指導要領のテーマは『生きる力』。
これは3つ力で構成されます。
- 学びに向かう力、人間性など
- 知識及び技能
- 思考力・判断力・表現力など
3つ目に『思考力』が入っていますね。
これが考えるちからのことで、様々な力に影響していくもの。
筋肉と同じように、他の多くの要素を支える基礎体力になります。
例えば「判断力」は、判断材料となる事実や仮説を思考力によって出さないといけません。
「表現力」も、深く思考してインプット量を増やすからこそ外に出すことができます。
“ない”ものは判断できないし表現できない。
そのために『考えるちから』が基礎体力になる。
そしてもちろん、中学受験でなぜ思考の深さを問う問題が出るかと言うと、社会で必要とされているからです。
『社会人基礎力』の考え抜く力
社会人基礎力の大枠の3つがこれ。
- 前に踏み出す力(アクション)
- 考え抜く力(シンキング)
- チームで働く力(チームワーク)
やはり考えるちからが入っています。
さらに今後AIが発達し、働く期間が延びる中で必要となる要素が少し変わってきています。
今現在は「ロジカルシンキング」が重要視されていますが、今後は「クリティカルシンキング」。
「なんでだろう?」
「それは本当かな?」
「前提にやイメージに捉われてない?」
「違う考え方もあるんじゃない?」
など、深く深く思考し本質に近づこうとする考え方です。
『問う力』と言ってもいいでしょう。
この思考が常識を破壊する力になっていく。
時代はどんどん新しいテクノロジーを生み出し、イノベーションを起こし続けています。
だから枠組みで考えることはAIに任せ、創造的な思考を人間が担う世界が重要になってくるでしょう。
アート思考とも通じる、本質を捉え、自分なりの答えで判断し、表現する力の元になるのが『考えるちから』なんですね。
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【子どもの考えるちから】を養う
筋トレと一緒~一日にしてならず
では、どうしたら『考えるちから』を養うことができるのか?
まずは筋トレと一緒で、急には出来るようにならないと覚えておきましょう。
ここが通常のテスト勉強と違うところです。
通常のテスト勉強で効いてくるのは、「何を学んだか」です。
テスト範囲の勉強を数日前にインプットしておかないと正解が分かりません。
でも、そもそもインプットするための効率のいい集中などはまた別の力ですよね。
中学受験や社会で大切なのは、「どう学ぶか」です。
社会ではテスト範囲を知ることは出来ません。
コロナや震災など予測不能な事態があり、ライバルがいつも自社を出し抜こうとうごめいています。
常に学び続け、変わり続けないといけない。だからどう学ぶかが大事。
筋トレをすると少しずつ筋肉が付いて、徐々に上げられるバーベルが重くなっていきます。
いきなり重いバーベルは上げられない。
それと同じで考えるちからも、鍛えることで少しずつ深くなっていきます。
いきなり深い思考の問題は解けない。
『考えるちから』は一日にしてならず。
お手本と訓練
『考えるちから』を養おうとすると、最初は「お手本」と「訓練」が必要です。
とはいえ難しく考えては欲しくないんですね。
「鍛えられてる、努力させられてる」と子どもが感じてしまったら、なかなかうまくいかないでしょう。
家庭で出来ることで十分だと思います。
お手本とは、『こんな考え方もあるんだぜ!』と示すこと。
例えばリンゴが目の前にある。
「これ何色?」と子どもに聞くと、きっと「赤に決まってるでしょ!」と答えるでしょう。
そこでお父さんは「本当か?」と問い、リンゴをバラバラに解体し実が見えるようにする。
「お父さんはほぼクリーム色だと思うな!」と示す。
「時間が立つと茶色く変化していくね。」「赤とクリームと茶を混ぜたのがリンゴの本当の色なんじゃないか?」
と、どんどん子どもの常識を破壊していく。
訓練とは、『問い続ける』こと。
最初は親が問い続け、やがて子供が自分自身に問うようになればバッチリです。
『なるほど!』『そりゃすごい!』『他には?』と、承認し問うことの価値を高めることが大切です。
例えば、ラジコンを目の前に置く。
「これ何色?」と聞かれたら、手本を知ってる子供なら(ふっふっふ、中の部品の色も見てやるぜ!)と解体し始める。
やがて「ほとんど黒だったよ!それから意外と銀も多かったな」と分かる。でもこれではまだ自分で深く思考していない。
『ほうほう!すごいことが分かったな!』『他には何色と言えるかな?』と問いましょう。
「え!?」と一瞬戸惑った後、未知の世界への探求にワクワクしながら『自分の答え』を探しに行くでしょう。
「ビューっと早く走るものだから、風の色かな?」
『へえー!どんな色?』
「風は透明だけど、僕のイメージは青と白!」
『すごいね!なんで青と白なの?』
「うんとね、イメージが・・・そうだ!空と雲の色だから!」
ラジコンの色が空と雲の色という、とても素敵な自分なりの答えを探し出すかもしれません。
手本がある事で、子どもは「それもありなのね!」と気づきが生まれる。
問うことで、自由に答えを探し始めることができる。
正解を求める力とは違う
未来の社会で必要な力は、「この場合はこの方程式を使う」というようなパターンを覚えるものとは違います。
自分なりの答えを見つける力です。
なぜなら、社会は『正解のない問題への対応の連続』だからです。
さらに時代背景として、会社に頼れない社会になっていきます。今までは会社や上司の言うことを守っていればある程度出世できたかもしれませんが、人生100年を考えると社内のキャリアだけでは不安があります。
会社の外に出るということは、正解のない世界に飛び出すということ。自分の答えを求めることを意味します。
一夜漬けの勉強が正解を求める力になるとしたら、筋トレにも似た日頃の思考訓練が自分の答えを求める力になります。
重力に縛られて地上を歩く力が会社の中で生きる力だとしたら、空に飛び立つ立体的世界を手に入れることが社会の中で生きる力。
会社に使われる力を養うのではなく、大きな空を自由に飛び回る力を育ててあげましょう!