本格的に始動したキャリア教育を加速させるためにまだ足りないこと…
『社会のリアリティ』です。
元人事部長・現キャリアコンサルタントとして、学校だけに頼る姿勢から抜け出し地域社会が積極的に関わることが大切だと思う。
キャリアサンプルを子供たちに!
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変わっていく教育、変わりづらい実態
プログラミングやお金の勉強スタート!
すでに2020年から小学校ではプログラミングや道徳の勉強が強化され、2021年は中学校で。
2022年には高校で投資の勉強までが始まると言います。
一度はなくなった道徳がまた重要視され、どちらかと言うと遠ざけてきた投資の知識も必要なのではないかと。
それもそのはず。
結局お金は生きる上で最も大切なもので、その扱い方や認識の勉強がない方がおかしい。
そしてまずいことになる原因はいつでも人の心。
その本質的な解決を仕組みやルールではなく、それぞれの心でやっていきなさい。
『生きる力』の名のもとに、自分の足で歩いていける子供たちを養おうと確実に教育は変わっています。
しかもただ知識を与えるだけの受け身な教育方法ではなく、文部科学省から先生へ『アクティブラーニング』の実践が求められています。
それから社会に自分のポートフォリオを持っていけるように『キャリアパスポート』も導入された。
しかし、アクティブラーニングのやり方は先生任せであり、社会の問題の奥行までの説明はされていない。
社会に出るのになぜ子供時代からのポートフォリオが必要なのかも文字情報で与えられる程度で、先生の解釈によるところが大きいでしょう。
そもそもなぜキャリア教育の強化なのか、実感を得ずに教育せざるを得ないというのが教育現場の実態のようです。
でも、社会との結びつきが弱い
今まで学校ですべて完結しようとしてきた風潮がありますよね。
これは社会全体の影響があって、学校も苦しいところではないでしょうか。
なんでもかんでも学校に責任を問われますから、先生たちの負担は増すばかり。
子供たちの教育は分担されず、学校に任せきりにされている雰囲気がまだまだあるんです。
でも自治体でもこれは変わり始め、一人ひとりに合わせた教育が始まりつつある。
一律の教育から個人に合わせた教育に変化していきます。
僕のいる市もかなり教育熱心なので、中高一貫校や小中一貫がどんどん出来ています。
県外からも教育熱心な親御さんが引っ越してくるぐらいです。
と言うことは、どんな進路にするのか親が早くに考えないといけない時代ということです。
新しい教育指導要領でも『地域社会との連携』という文言が明記され、いよいよ校外の大人たちが教育と向き合わないといけない。
未来の人材育成を学校頼りにしてはいけないんです。
未来の社会を形成する人材を育てるため、学校にはできない部分を地域社会が行っていく必要がある。
社会のリアリティ、夢も問題も多くの教えられることがある。
いえ、教えないといけないことがあるはずです。
教育の事を何も知らない地域社会ですが、逆に社会の事を教育現場は知りません。
お互いが情報提供し、協力し合って未来をつくっていくんですね。
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足りないのは“大人の実態”
理論と平面にリアリティはない
僕は元人事部長としてキャリアコンサルタントとして、子供たちのキャリア教育に足りないものは『リアリティ』だと思っています。
職場見学や仕事体験、フィールドワークやインタビューなどが増え、確かに充実したキャリア教育に見えるかもしれない。
だけどそこには情報の偏りがあり、深みがないからリアリティに欠ける。
理論や現時点何をやっているかという情報は、上辺の“平面的な情報”に過ぎない。
本当に起こる社会の問題には、人の個性や価値観の違いによるいさかいや、決して白黒つかないことへの折り合い、会社という性質上様々なものが襲い掛かる。
それでもなぜ、そこにいるのか。なぜ、この仕事をしているのか。
どんな過去があって、どんな想いがあって、何を諦めて、何に希望を抱いて、どんな仕組みで、どんなつながりで。
深みとなる情報は、平面に加えて“タテの情報”が必要なんです。
立体的にキャリアを描けて初めて、自分自身のキャリアと照らし合わせることができます。
この情報が、教育現場にはなかなかないものなんですね。
“近しい人”の仕事に興味を持つ
子供たちはどんな職業に興味を持っていくでしょうか?
教師、ユーチューバー、親の仕事・・・まず、簡単に見知りできる職業に興味を持ちます。
近しい人の職業には興味を持つんですね。
大切なのは興味だけではありません。
「それはしたくないな」と選択肢から除外するのも、職業選択のうえで必要となる価値観。
ではそこまで明確に興味を持ったり除外したりできるのはなぜか?
“タテ情報”を得やすいから立体的に把握でき、貴重なキャリアのサンプルになっているんです。
その人の歴史や想いを知り、なぜこの仕事をしているのかという理由が腑に落ちていく。
「お父さん、昔は消防士になりたかったんだよ」
『え~!じゃあなんで今はITの営業なの?』
「部活の先生が紹介してくれた社長さんがすごく気の合う人でね。」
『何に気が合ったの?』
「ITの力で災害を減らす商品を作ってるんだ。ああ、火事が起きてからより起きる前になんとかしたいなって。」
「それに、ITは面白いんだぞ」
『へえ~!面白そう!(父ちゃんかっけー!)』
という具合に。
このサンプルが多い方がいいと思いませんか?
現代の進歩は子供たちに選択肢を増やし、個人個人に合った仕事ができるチャンスがめちゃくちゃあるんですから。
『キャリアサンプル』
地域社会から提供できる一番の情報が、このキャリアサンプルだと思います。
リアリティのある人の生き方。
決してお手本である必要はないはずです。
これからの子供たちは、自分の考えで判断できる力が必要ですから。
『平面情報+タテ情報』
立体感のある職業の理解は、必ず子供たちの心に何かを与えます。
僕がキャリアコンサルタントだから必要だと思うわけではありません。
社会の実態を見続けてきた人事のプロとして、子のいる親として、地域社会の住民として。
日本が必要としているキャリア教育には、外部からの力が求められていると思います。
大人が自分の仕事について子供たちに語る場面を、もっともっと増やしていきたいですね。