評価の仕方には大きく2つあると言われています。
『絶対評価』と『相対評価』
どちらが良いか悪いかというのは、正直難しいですね。
社員から言わせれば、「どっちも嫌だ」かもしれない。
「自分に都合のいい方」が正解かも。
経営者がとても頭を悩ませる評価制度。
どちらも運用した経験のある僕の主観で語らせていただきます!
2つの評価『絶対評価』と『相対評価』
『絶対評価』
絶対評価は、評価項目に対して出来たか出来ていないか。
項目はあらかじめ決めてあり、役職や部署によって変わります。
なので、ABC評価があるとしたら
全員がAになることもあるし、全員がCになることもある。
テストや資格試験は絶対評価。能力を満たしているかどうか。
この評価は社員の納得性が高いですね。
出来たか出来ていないかなので、分かりやすいからです。
だけど、この評価制度を作るのは並大抵のことではありません。
はっきり言いましょう。
完璧な絶対評価をつくることは、不可能です!
そもそも評価は、誰がするものですか?
成果とは何ですか?
成果とは利益。お客様が価値を感じた度合いです。
つまり本当の評価はお客様がする。
その場、その人によって、評価なんてものは変わる。
評価項目なんてものは目安程度だと思った方がいい。
しかも作るのが難しいので、一度作ったらその項目のままになることが多いんです。
時代が変わってもそのままになるんですね。
なんでこいつの評価がこんなに高いんだ?ってこと、ないですか?
『相対評価』
対して相対評価は、順位付けをすることです。
社員のランキングといったイメージ。
ABC評価だと、
Aが何%、Bが何%、Cが何%と人数が決まってしまう。
だいたいみんな、嫌がります。
「そんな評価ひどい!」って人もたくさんいます!
やり方は様々。
全体の印象で順位付けしたり。
項目ごとにそれぞれ順位付けして、総合点を出したり。
売り上げだけで評価したり。
部活のレギュラー決めは相対評価。全員強くても、全員は試合に出られない。
納得性は運用次第。
「納得できねえ!」って人が増えるかと思ったら、そうでもありません。
ランキング自体には、意外と納得します。
誰が出来て誰ができないというのは、現場だと肌で感じていますから。
ただし、それが毎月の給料に反映したりすると話が違う。
「こんなに利益上げてるのに、なんで給料がこれだけなんだ!?」となりますから。
バランスと社員の心理はしっかり考慮して運用する必要があります。
相対評価は絶対評価より自由度が高く、詰めて作らなくても運用できるもの。
ただし、
経営者に都合のいい評価にしてしまったら、最悪の事態を招きます。
社員はそもそも評価されたくない
『絶対評価』は時代に合わない
では、僕が実際に運用した経験則です。
『絶対評価』では会社が衰退します。
変化の激しい世の中、社員の納得性だけで評価をしたら取り残される。
項目をクリアすることが目的になると、それ以上求めなくても社員にとっては害がない。
アップデートもしづらく、新しく生産性のある仕事が生まれてもすぐにそこを評価できない。
あいまいな評価項目のままだと社員が納得しない。
終身雇用の考え方に近いのが絶対評価です。
評価項目にないことをやるのが損で、
評価項目にあることだけをやれば社員に利益が出てしまう。
そして何より、本気で絶対評価をしっかりやろうとすると、何人も評価制度作り専門で動き続けないといけないぐらいになるはず。
こんなに非効率なものはありません。
しかし、日本の実情は絶対評価がまだまだ多いのではないでしょうか?
学生時代はずっとテストでいい点を取ることが評価でしたから。
社員が「ちゃんと評価制度を作ってくれ!」と言う時、だいたいこの絶対評価のことを言っています。
僕もみんなの声に応えようと、ずいぶん頑張って作りました。
だけど本当にきりがない。そして必ず文句も出ます。
完璧な絶対評価は現実的ではないと感じました。
会社の実情は、「部活」に近いと思いませんか?
つまり本質的には『相対評価』が合っているのではないか。
『相対評価』は社員がブーブー
相対評価を導入する時の社員の反発はすごいものでした。
皮肉なものです。
でも考えれば当たり前です。
部活に入部したら試合に出たい。
みんなと同じがいい。
ライバルと切磋琢磨するほど、頑張ろうとなんて思ってない。
ですよね。
会社で相対評価というと、“誰かを蹴落とす”というイメージになります。
メモ
実際、運用方法を間違えると蹴落とし合いが始まります。
安易すぎる相対評価はダメ。
しかし会社の側面から現実を見てみましょう。
全員に上限なく伸びてほしい。良い評価の社員と追いつけ追い越せで頑張ってほしい
頑張ってくれたほうが当然ありがたい。
現実に、相対評価の方が社員は伸びる。
(絶対評価的な項目は仕事の成長として必要ですが)
良い評価制度ほど、社員を追い込み社員に頑張らせる。
だから負荷がかかるし、嫌々やって成長するのが相対評価です。
元人事部長のおススメ!
『絶対評価』はマニュアル
では、絶対評価は必要ないのか?
そんなことはありません。
絶対評価はマニュアルだと思ってください。
仕事の成長ガイドラインです。
具体的な項目がないと、「何をしたらいいか分からない」と言われてしまいます。
僕の会社で最終的に落ち着いたのは、絶対評価で等級を変えるというもの。
仕事の出来る出来ないだけに限るので、マネジメントは項目に入れない。
だから昇進には影響しない。
仕事が上手になった分は、等級を上げて毎月の給料に反映する。
と、ここで勘違いしてはいけません。
これはメインの評価ではありません。
メインの評価制度は『相対評価』として据える。
相対評価でカバーできない能力の部分、成果に出ている部分を絶対評価で補う感じです。
『相対評価』がメイン評価
社員は順序が決められる。
厳しい世界で仕事していることを認識してもらう。
社員にこの環境に慣れてもらうことが、強い組織をつくる。
しかし、重要なことがあります。
絶対に人間性を相対評価しない!
これをやってしまったら最悪です。
好き嫌いで評価しているようにしか見えず、正当な評価は期待しなくなる。
上司へのゴマすりが始まり、優秀な社員ほど呆れて辞めていきます。
ポイント
相対評価の項目は、仕事の進め方や会社の方針に対する行動など、なるべく本人同士も比べられるものにする。
プロセスであり、行動を評価します。
やったらやっただけ評価されるというのがベスト。
この項目次第で、会社が何を大切に思っているかが伝わります。
そしてこれを反映するのは『賞与』です。
賞与は給料ではない。社長からの温情です。
もらえるのが当たり前と思っている社員がほとんどですが、払わないといけない決まりはありません。
だから評価項目も、本当は社長の好き勝手決めていい。
さすがにそんなことはやめた方がいいですが、この共通認識を持つことで
低いと言われる相対評価の納得度が高くなります。
メモ
管理職はプロセスで評価される割合を落とし、経常利益などを入れるとさらに社員全体の納得度が高まります。
『相対評価』でないと怖い理由
絶対評価だけにしてしまうと…
- 成長が止まる
- 自分で考えなくなる
- 出来なくなっても落ちづらい
ということです。
だから相対評価を巧みに使って、会社が求める行動を示唆しつつ、成果だけでなく価値観を共にする行動を評価する。
評価にどちらがいいというものはなく、運用する側の使い方次第です。
どんな評価も、全員が納得する制度は絶対になりません。
人間は評価なんてされたくないですから。
だけど本来、社会人は「価値を提供する者」です。
厳しくて当然だということも、多少は理解しながら仕事をしたほうが健全に楽しさを味わえる。
正解はない。“うまく”使うことが大事ですね。