元人事部長が見てきた20年、社会には「価値観すら変わった」と言えるほどの変化があった。
これからの20年、いま生まれる子供たちが出ていく社会はいったいどれだけ変化しているだろう?
予測不能な社会に対応する『新時代のキャリア』に必要な素質とは?
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旧世代キャリア~現世代キャリアの変化
僕の見てきた20年
僕は元中小企業の人事部長でした。
新卒採用にも10年携わり、中途採用やバイト採用もしてきました。
フリーター生活から数え、社会に出てから約20年が経ち、本当に“変化が大きいな”と感じるばかりです。
僕はちょうど「氷河期」と言われる時期に社会に出て、新卒を迎えるころに彼らは「ゆとり世代」と言われた。
確かに新しい世代性を感じるなと思いながら一緒に仕事をして、今はさらにその下の世代性を感じます。
大きく分けると、『20年前・10年前・現在』世代が移り変わっている。
10年前にゆとりと言われた世代も、現代に向けて成長していく世代の過程だと感じます。
だけど当時は「最近の若いモンは!」という言葉が流行ったぐらい、新しい世代を受け入れたくない旧世代の抵抗のようなものを感じた。
時は流れ、氷河期世代(20年前)の僕たちのような“終身雇用を前提とした価値観”の人たちはとても苦しい変化を迫られているでしょう。
正しいこと、間違っていること、そういった価値観までが逆転した20年だったんだなあと思っています。
計画性・現実的思考へ
では、何が変わっていったのか?
僕の感じる一番の価値観の変化は、“計画性・現実的思考”を持つようになったことです。
20年前の僕たちが社会で何と言われていたか思い出してみました。
「夢を持て!」
「出世しろ!」
「常識をわきまえろ!」
「社会人ならライバルと戦え!」
特に組織の中で大きくなろうとする傾向が強い価値観。
一部の人が儲かる構造であり、それでもその他の人も安定した生活を送れる人口増時代でした。
将来に対して多少楽観視していてもなんとかなると、まだ多くの人が思えていたように感じます。
だけど、10年前にはすでにそれが崩れ始めていた。
ゆとり世代と言われる若者たちは疑問を抱いています。
「夢なんて持てるの、おじさんたちだけじゃねえ?」
「計画立てたいけど、この会社の中でキャリアアップするのは現実的に無理なんだけど」
感覚的に、現代の問題を察知していたと言えますね。
10年前の若者あたりから、人口減の社会を肌で感じ始めていた。
「人口ピラミッド」というのを聞いたことがあるかもしれませんが、すでに逆ピラミッドであり、データで見れば一目瞭然。
しかし現実に「これは大変だ!」と確信を持ち、真剣に準備し始めた人は少ない。
特に僕たち氷河期世代で本当に危機感を持っている人はわずかだったのではないでしょうか。
氷河期とはいえ職にありつけ、安定した基盤を築きはじめ、将来に対して多少楽観的ともいえる価値観があった。
色んな要素が重なり、その後に来る現実を受け入れるのが遅くなっていたのではないかと思います。
将来への楽観視をゆっくりと否定しだす
10年前から現代へ。
新しい世代から順に、将来への楽観視を否定し始め現実的思考へ変化していった。
教育の変化など原因となっていることは多々ありますが、一番は情報量の差ではないでしょうか。
デジタルネイティブから、スマホネイティブへ。
世帯に1台のパソコン時代から、1人1台のスマホ時代。
僕たちが社会に出てある程度経験を積まないと手に入らなかった情報が、子供でも一瞬で手に入る時代です。
情報化社会が現実主義を加速させた。
そう考えると、20年前は恐ろしい世界だったと思いませんか?
何も知らない家庭で育った何も知らない若者がほとんどの社会で、何も知らずにただひたすら言われるがまま頑張っていた。
将来への楽観視は、そうするしかなかったからかもしれません。
でも今は違う。
正しい情報を仕入れる機会が多くの人に用意され、選択する余地もあり、個人の意思も形成されやすい。
次世代の人達と一緒に旧世代の私たちも変わっていきさえすれば、決して暗い次第ではないと思っています。
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『新世代キャリア』に必要な素質
変わり続け・成長し続ける
『新世代キャリア』は、これから社会に出る若者にだけ関係するものではありません。
新世代を生きる私たち全員が考えないといけないことです。
その基本的姿勢は、『変わり続け・成長し続ける』ことです。
政府が掲げた新しい学習指導要領『生きる力』は、どんな変化にさらされようと強く生き抜く力をつけるためのものです。
つまり、どんな世の中になるのか予測するのは不可能に近いから、変化に対応する術を身に付けようということ。
ダーウィンの進化論にもある、本質的な生き抜く方法です。
ただ、これは自分の生き方や信念を変えないといけないというものではありません。
目の前の変化に対応するためにはむしろ“強固な意志”が必要です。
自分に対する信念とも言えます。
自信、自分への理解があるから変化が出来る。
この基本的な姿勢を、20年前の僕たちは軽視されていたのだと思います。
自分という芯を持ち、柔軟に変化に対応する力強い生き方。
停滞は非安定・安心
昔はいい会社に入って安定するといった価値観でしたが、今は違います。
会社の中で安心してしまうことはむしろ不安定。
役職に就いてほっと一息ついている停滞期が、一番危険なんです。
安心して留まることは逆に不安定である。
これはある意味、危険を察知する直観的力です。
「このままここにいちゃ危ないな」と感じることができるかどうか。
僕たち20年前の氷河期世代は、この感覚が恐ろしく鈍っています。
子供たちに「安定を目指しなさい」と教える前に、なんとしても自分たちが変わらないといけません。
自分という個性軸を持ち、専門性を磨く分野は複数持った方がいいでしょう。
決して浅い分野で軸にしてはいけません。
軸は根っこに、深く、深くです。
2世代変化を前提に
最後に、世代は10年ごとに変わっていくと考えておきましょう。
少なくとも『2世代変わる』ということを前提にすることで、「次はこうなればいいんだ」という固定観念から抜け出していきましょう。
いま生まれる子供たちが社会に出るまでに、あと2世代は変わる。
先代となる僕たちや現世代が、変化を前提とする。
その前提すら変わるかもしれないという前提を持つ。
僕が見てきた20年で、大きな変化がありました。
10年かけて疑問が浮上し、また10年かけて多くの人の確信に変わっています。
20年あれば社会の価値観は逆転する。
今を当たり前と思わず、新しい世代には新しい価値観が必要だということを念頭に、自分自身が変化し子供たちに関わっていきましょう。